<はじめに>
みなさんこんにちは、墨高野球部のイガラシです。
今回はですね、以前も紹介した“マネーボール理論”の中で言われていることの一つ、「盗塁はあまり意味がない」ということについて、ぼくなりの見解を述べたいと思います。
ちなみに“マネーボール理論”というのは、メジャーリーグのオークランド・アスレチックスのGM(ゼネラルマネージャー)を務めたビリー・ビーンという人が、セイバーメトリクスと呼ばれる統計学的手法を用いて編み出した理論のことです。まあ、あまり詳しく話すと本題から逸れちゃうので、紹介はこれぐらいにしておきます。
ということで、今回のテーマは……
「盗塁は本当に意味があるのか!?」
1.「盗塁の意味」は確実にある!!
先にぼくの見解を言いますと――ちゃんと盗塁の意味はあります。
一応断っておきますが、この“マネーボール理論”を全否定するわけじゃありません。話としては面白いですし、現にこの理論を使って、オークランド・アスレチックスというチームは強豪チームへと変貌したわけですから。
ただですね。その講座第1回で送りバントの話をした時にも言ったと思いますが――この“マネーボール理論”には、「ピッチャー心理」の視点が抜けているんですよ。
ぼくもピッチャーをやっているので分かりますけど、たとえアウト一つもらったとしても、次のバッターを確実に三振に仕留められる保証でもない限り、やっぱりランナーを二塁に背負うというのはイヤなものですよ。
打ち取った当たりでも、飛んだ所が悪ければポテンヒットになったり、イレギュラーして外野へ抜けたり、内野手がエラーすることだってあり得ますから。ランナーが二塁にいたら、それで一気にホームまで帰ってきますからね。
盗塁も同じです。まあ明らかに鈍足なランナーで、こいつに走られても確実にアウトが取れる場合は別ですけど(笑)。やっぱり相手が「走ってくるかもしれない」と思うだけで、ランナーに神経を割かれて、その分バッターとの勝負に集中できなくなるんですよ。
また盗塁を警戒した場合、どうしても投げる球種がストレート中心になって、カーブとか緩い変化球が使いづらくなるんですよね。となると、今度はバッターにストレートを狙い打ちされやすくもなります。
逆に「相手が盗塁してこない」と分かると、バッターとの勝負に集中できるんですよ。もちろん色々な球種を使えますから、その分ヒットを打たれる確率も減るわけです。
2.盗塁しない方が良いケース
もちろん、だからといって「必ず盗塁すべき」とは言いません。
たとえばですね……ランナーが一塁で、バッターが王貞治選手だったら。わざわざアウトになるリスクを冒して盗塁するよりも、王選手のホームランに期待する方が、ずっと合理的ですよね。
また、相手投手がコントロールを乱して、ストライクが入らない時もそうです。もちろん走るフリをして、集中を乱させることはありますが、相手が勝手に自滅してくれそうな時に、もし盗塁を仕掛けてアウトになったら、相手を助けることになっちゃうじゃありませんか。
つまりケース・バイ・ケースということです。送りバントと一緒で、盗塁も「作戦の一つ」なわけですよ。
盗塁を一つ成功させることで、こっちに流れを引き寄せることもありますし。逆に相手の盗塁を阻止することで、相手の勢いを止めることもできます。
要は“駆け引き”ですよね。ぼくに言わせれば、「盗塁は意味がない」とか、その反対に「盗塁は絶対しなきゃいけない」とか、そういう決めつけ自体がナンセンスですよ。
<終わりに>
あと、これはどうでもいい話ですけど……たまにいるんですよね。“マネーボール理論”を使っていない日本の野球は遅れているとか、逆にそういう理論を取り入れると「メジャーリーグかぶれ」とか言って、揶揄するようなアタマでっかちの人達が。
そんなの、自分達のチームと相手チームの特徴や力量差を考えて、使うか使わないかを決めればいいだけなのに。そういう人達にこそ言いたいですよ――まったく野球を知ってるのかね、と。